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ラベル
三重大学工学部同窓会. Powered by Blogger.
2018年9月13日木曜日
目的・・2018年9月に工学部同窓会主催の「最新IT体験&視察ツアーin深セン」に参加させていただいた。大学卒業後に電子機器製造業に就職したため、深センの名前は昔から「電子部品と電子機器の巨大製造工場(iPhoneやPlayStationなどを作るフォックスコン(鴻海)の巨大工場もある)」として聞いていただが、最近は電子部品に加え、最新のドローン、人工知能(AI)、ロボット、開発型企業、の話をテレビや新聞で目にすることが増えていた。年間売上4兆円のアリババを生み、ドローン業界で世界市場の80%以上を占めると言われているDJI社を作った町、新シリコンバレーと呼ばれている都市、それらを支えた技術者、支える環境を見たかった。これらのことから深センの電子業界は今どうなっているのか知りたい、絶対に行きたい、と思っていた。
結果と内容・・深センは、50年前の日本がそうであったような、アイデアと活気と挑戦心を持つ若者(または青年、年齢に関係なく)にチャンスを容易に与えてくれる、まさに新電子立国、あるいはアジアの新シリコンバレーだった。
本家シリコンバレー(米国、カリフォルニア)はアイデアを持つ人間にいまでもチャンスを与えてくれるが、最近ではその将来性として売り上げ数億円を期待できないと投資してもらえないらしいが、新シリコンバレーの深センでは売上が1千万円程度でもチャンスをくれる、と言われている。だから挑戦者、若い起業家が絶えない。
深センは香港に接する人口約1500万人(現地ガイドは昼間の人口は2000万人と言う)の都市で、約20万人の漁村だったがここを1980年に鄧小平氏が中国初の経済特区として開発した極めて新しい都市だ(ちなみに1980年は私が三重大学を卒業した年だったのでなにか不思議なつながりを感じた)。このため町は区画整理されており、新しい家、ビルしかなく、極めて清潔で、安全な街の印象だ。
初日に日本向けの高品質の電子機器を小ロット(1000台から)で製作する「ジャネシス社」(上の写真)を訪問させてもらった。中国工場のイメージひっくり返す衝撃的な会社だった。作業場はクリーンで、静電気もチリも制御され、小型ロボットが作業者の隣で稼働しており、高品質の製品を作る環境であると納得できた。さらに技術担当者の「高須正和さん」(業界では有名人と後で知った。グーグルで検索すると多くヒットする。この人のプレゼンを手配してくれた今回のツアー企画責任者に感謝)は「目からウロコ」の話で秀逸だった。まとめると以下のような内容だった(食事時に直接お聞きした内容を含む)。
<深センについて>
1.携帯電話、PC、ロボット、などあらゆる製品の中間部品(中身の部品実装済み基板だけという意味。たとえばiPhoneのスピーカーモジュール、別の製品のCPUボード、Bluetoothモジュール、LiNH充電モジュールなど。中古、ジャンク品含む)が電気街の部品屋に多く放出されているので、新製品を見れば、1週間程度でオリジナルに近いコピーが作れる。新機能を加えれば売れる新製品が簡単にできてしまう。
2.アイデアがあれば、高度な電子機器の試作品を安価に1週間で作れる。重要なケースも無数の既製品のケースだけが販売されているので、立派な製品が作れる。だから起業家が世界中から集まってくる。ちなみに約50%は欧米人とのこと。本家シリコンバレーではなく深センで起業するアメリカ人が増えているとのこと。
3.無数の作業場(工作室)付き賃貸オフィスがあり、3Dプリンタ、レーザーカッター装置を自由に使えてデスク1つならおおむね月2万円で借りられるので、試作が簡単に作れる。
4.無数の大規模、小規模の投資家(ベンチャーキャピタル)がおり、アイデアを見せれば製品化までサポートしてくれる。上記の作業場付き賃貸オフィスのオーナーは彼らの上場時の利益分配を期待して投資もしてくれるらしい。
<中国企業との取引について>
1. 品質は工場ごとに決まっている。故障率10%以上から1%以下まで選べる。製造単価が安いという理由で不良率の高い工場に依頼したあとに、「将来的にあなたのためだから品質を改善しろ」というのは日本的な考えで、通用しない。言ってはいけない。故障率10%ですでに巨大な利益を得ており、またこれを許す市場が世界にある。→これは「目からウロコ」話だった。
2. 値切ってはいけない。
3. 性悪説で考える。
4. 要求を押し付けない、など。
待ち望んでいた大電気街「華強北(ファーチャンペイ)」に行った(上の写真)。80m以上の広い道路の両側に大きなデパートのようなビルが並ぶ、日本の東京・銀座のような街だ。
日曜日はその東京・銀座と同様に歩行者天国になっていた。しかし、見えているデパートはすべて電気・電子部品や、PC・カメラを含む電子機器、だけを売る間口2m程度の小さな店舗が各フロアに数百店舗入る、電子部品のデパートだ。
上記の写真のビルの6階から8階まで、すべての小さな店舗がLEDや、LEDテープ、を販売していた。つまり数百店舗が同じフロアでLEDを売っている。常識では考えられない。店舗の拡大写真では、間口2m程度の店舗で男性店主が対応しているのがわかる。チップ抵抗を巻いたリールが並んでいる店舗もある。東京・秋葉原や大阪・日本橋の電気街では見たことがない景色だ。
ここに携帯電話やそのほか多くの電子機器の中間部品(中身の部品実装済み基板だけという意味)を販売している店舗が無数にあるため、基本的な構成を考えて、集めれば、それなりの製品がすぐにできそうだ。デパートの1階には加工済みケースを1個から販売するケース屋もあるので、最後にケースを買ってそれに実装すれば試作1台目は完了するかもしれない。
ドローンの世界市場80%を持つと言われるDJI社を生んだ町でもありドローンの販売店舗も多く、カメラ・ビデオ付きで使えそうな小型ドローンが豊富に売られている。確認用にビデオカメラ付き超小型ドローン(コントローラ付き)を110中国元(約1800円)で1台購入した(下の写真)。2.4GWiFi内蔵なのでiPhoneだけで制御できるが、もちろん日本の技術基準適合認定(技適)を取得していないので日本では使えない。回路的にかなり高度なので、その開発費用と製作費用、部品原価を考えると、とても1800円程度では販売できないと常識では考える。が、深センでは可能なのだ。
作業場付き賃貸オフィスを訪問した(下の写真。机一つが1人の事務所スペース)。机1つを借りると作業場と設置された工具(3Dプリンタなど)が自由に使え、さらに共有のミーティングルーム、飲食スペース、無人販売の食品スペースが使える。隣の机は別の会社、ということだ。大部屋にさまざまな起業家、会社(おおむね1人会社)が入って、さまざまな新装置を開発している。1ヵ月2万円くらいから借りられるらしい。日本にもファブラボなど会員製の工房が増えてきているが、占有できる事務机付きの工房は聞いたことがない(少なくとも私は知らない)。極めてうらやましい。
日本のテレビニュースや新聞でも話題になった無人のコンビニを訪問した(下のガラス張りのコンテナのような店舗写真)。ご存知の人は多いと思うが中国では多くの店舗(露天でも)支払いは電子化されており、現金をほとんど使わない。商品に張り付けられたQRコードを読み取り、表示された金額をクリックして認めれば支払いが完了する仕組みだ。このサービスを提供する会社は2社あり、多くの人がその支払いのためにAliPay(アリペイ)かWePay(ウイペイ)のいずれかのスマホ用アプリを使用している。ちなみに前者はAlibaba(アリババ)が運営、後者は日本のLine(ライン)に相当するWeChat(ウイチャット)を提供する会社が運営している。
この無人コンビニでは商品を購入する以前に、まず建屋に入るためにいずれかのアプリでQRコードを読み取る必要がある。残念ながらいずれのアプリも支払方法として中国国内の使用者の銀行口座に連動させており、いずれも自分のiPhoneにインストールできたが、結局アプリは使用できなかった。したがって、ガイドさんに数人ずついっしょに入室させてもらい、体験できた。見学しているときにも若い女性が入ってきてドリンクとお菓子を買って出て行った。簡単に終了する。ただし、セキュリティーが厳しく、入り口も出口も2重ドアとなっており、1つめのドアを閉めないと2つめのドアは開かない仕組みだ。出る時も持っているものを計測カウンターに置き、正しく認識させないと出口の扉は開かない。24時間営業している、ということだが、システムの信頼性、安全性、にちょっと不安が残る。単価が安い商品だけの販売で、そもそも利益が出るのだろうか。
その後、アリババ本社ビルなど多くの新興企業の巨大な自社ビル(いずれも数十階建てで想像を絶する)を見るなど、2泊3日の深センツアーを駆け足で終えた。さまざまな「目からウロコ」の情報を知り、また貴重な体験をすることができ、きわめて有意義な3日間だった。深センの起業家の熱いエネルギーを実感した3日間だった。帰国してからは「なんとか深センにオフィスを借りて起業できないか」と考えて、作業工房付き賃貸オフィスのWEBを見ている毎日です(夢)。
このような機会を提供してくれた工学部同窓会会長、柿崎さん、また、今回の視察ツアーのさまざまな手配、準備をしていただいた森川さん、また現地ガイドさん、に深く感謝いたします。ぜひ、定期的にこのような視察ツアーを開催していただけることを強く期待、希望します。
今回は学生の参加はありませんでしたが、「若いころに訪問していれば人生が変わっただろう」と思わせるツアーだったので、ぜひ、次回は参加されることを強くお勧めします。何年後かに「今年は三重大学の学生3人が華強北(ファーチャンペイ)で賃貸オフィスを借りて、起業してますよ」、という話を聞きたいものです。
ありがとうございました。
2018年9月12日水曜日
■180907~8 「ITツアー感想記」
三重大学工学部の柿崎賢一同窓会長の発案で2018年9月7日~9日に、三重大学工学部の卒業生を始め関係者を組織し「最新IT体験&視察ツアーin深圳」が挙行された。私も三重大学工学部のOBとして北京から現地参加した。
今の世の中、IT無くして生活・産業を語れないほどあらゆる分野にITが浸透してきている。その発展のスピードも目を見張るものがある。
今回私が参加を申し込んだ理由は二つあった。かねてから近年の深圳の発展ぶりを耳にしており機会を見つけて一度現状をこの目で見たいと思っていた矢先のタイミングのいいツアーの誘いであったということ、もう一つの参加理由は、三重大工学部の卒業生との交流が図れるいいチャンスということだった。
久しぶりに深圳に行ったが、以前に行った時の深圳のイメージと今回のそれは全く別物のように変わっていたことに大きなショックを受けた。今回訪問したIT会社二か所のプレゼンテーションを受けたが、深圳という都市が「中国のシリコンバレー」と言われる理由がよく判った。限られた時間の今回の訪問であったがこの街の変貌ぶりとパワフルな現況をあらためて認識ができ本当に有意義なツアーだったと私自身はその成果を喜んでいる。
また、「先輩は頼るもの、同輩とは助け合うもの、後輩には面倒見るもの」という考え方を持つ私としては、今回のツアーを通じてこれまで面識の無かった三重大の後輩と出会い、同窓の輪がまた少し広がったことは自分としてのもう一つの大きな成果だった。しかし残念だったことは、参加数をみてこのツアーを有意義なチャンスと思った人が少なかったことだ。
これからも三重大学工学部同窓会で同様のイベント開催を強化していくとのことなので今後を期待したい。
越智博通(中国・陸通印刷グループ董事長)
三重大学工学部電気工学科第一期(S48)卒業
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